#006 [2023/10.22]

わたしたちの、このごろ

私は『やりたいこと』というより、
自分の大切にしている考えと
マッチするかしないかを軸にして、
仕事も暮らしも選択していきたいんです。

板橋今日子さんKyouko Itabashi

24歳の板橋今日子さんは迷いのない表情でそう語る。現在、健康食品・化粧品の通信販売を運営する会社で、マーケティングを担当している板橋さん。

板橋さん:既存のお客さまとのご縁が長く続くように、商品と一緒にお送りする月刊誌の編集やノベルティーの制作など、愛着を持ってお買いものを続けてもらえるような仕組みを日々考えています。無くても別に困らないけどあったら嬉しいと思うものを作ったり、考えたりすることが好きなので、今の仕事はとても楽しいです。

社会人2年目にしてすでに自分に合った仕事を見つけている彼女は、とてもイキイキとして見えるが、かつては自分の軸を上手く言語化することができなかったという。

一度始めたことは
途中で投げ出したらいけないという
責任感があったのかもしれない

板橋さん:幼いころは流れにまかせて自分のやることを決めていた気がします。これといってなにかに興味があったわけではなかったのですが、水泳や英語、ピアノなど、母が色々と習い事をさせてくれて、どれも長く続けていました。3人兄弟の長女ということもあり、一度始めたことは途中で投げ出したらいけないという責任感があったのかもしれません。

仲の良い友人の影響で小学生から始めたバスケットボールも高校生まで続けたという。

板橋さん:自分の意思ではなく、人からきっかけをもらったことばかりですけど、どれもやっててよかったなと思います。たくさんのいい出会いがありましたし、ずっとやってきたことってやっぱり身に染み付いているのか、最近またピアノが弾きたくなって電子ピアノを買いました(笑)

そんな板橋さんが自分の意思で所属することを決めたのは、大学入学後に出会った海外インターンシップを運営する学生団体「AIESEC」だった。

板橋さん:どのようなコミュニティーに所属してどんな大学生活を送ろうか迷っていた時、AIESECの新歓に行きました。そこに所属していた同じ大学の先輩がみんなキラキラして見えたんです。ひとつしか歳が変わらないのに軸がしっかりあって自分の意思でやることを決めている人ばかり。私も流れにまかせて生きるのではなく、もっと情熱を持てることに出会いたいという思いで所属することを決めました。

これまで人からもらったきっかけで続けてきたことも、板橋さんにとってはどれも後悔のない選択となっているが、やはり自分の意思で選んだ「AIESEC」での経験は、何ものにもかえがたいものになっているという。

自分自身と向き合う時間が増えて
大切にしたい軸がだんだん分かってきた

板橋さん:自分と向き合う時間を大切にしている人が多くて、自然と私も自分自身と向き合う時間が増えました。相変わらずやりたいことが見つかったわけではなかったのですが、自分が大切にしたい軸がだんだんと分かってきたんです。

AIESECでともに活動する仲間との出会いや、インターンシップで訪れたスウェーデンでの出会い。板橋さんが気づいたことは、あたたかい人との出会いを積み重ねることが、なによりも自分の幸せにつながるということだった。

板橋さん:振り返ってみれば今までもそうだったんです。やることよりも、一緒にやる人や、そこから生まれる出会いを大切にしていたことに気づきました。
その後の就職活動でも、彼女の大切にしたいことと同じことを大切にしている企業を探す中で、今の会社と出会ったそう。売り上げ以上に、お客さまとの出会いを大切にし、その縁が長く続いていくような施策を考える姿勢に共感したという。

板橋さん:同じ学部を卒業した友人は大企業に就職する人も多く、私もファーストキャリアとして中小企業ではなく、もっと名の知れた大きな企業を選んだ方がよかったかな?と少し悩んだこともあったのですが、私が大切にしたいことはお金や肩書きではないということが明確に分かっていたので、ブレることはなかったです。

実際働きはじめて約2年。
自分の選択は
間違っていなかった

板橋さん:この業界に入りたい!という思いで入社を決めたわけではないので、社会人1年目は環境がガラッと変わって、そこに適応していくことに時間がかかりました。それでも自分の大切にしたいことと会社の理念が同じだったので、そのことにいつも支えられていました。今はお客さまにとって、この会社に出会えてよかったと思ってもらえるように、自分にできることをしたいと思っています。

編集部のまとめ

私たちは、長い人生であらゆる選択をしながら生きていく。自分の好きなことや、やりたいことを軸に選択する人、はたまた板橋さんのように自分の大切にしたいことを軸に選択する人。しかし、情報過多な世の中では、その軸さえ見えなくなっている人もいるのではないだろうか。
そんなときには、あらゆる情報をシャットダウンし、自分と向き合う時間をつくることで本当に必要なものが見えてくる。一度見えれば、それが迷いのない選択をとっていける大きな道しるべになるのだと、板橋さんの話から改めて教えてもらった。

STAFF
photo/text: Nana Nose