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『源氏物語』の「女楽」の光景を手に。華やかに宴を彩る女君たちの「装束イメージきんちゃくポーチ」

女三宮おんなさんのみや、紫の上、明石の上、明石の女御にょうご。それぞれの女君おんなぎみにまつわるエピソードから作り上げたオリジナルの有職ゆうそく文様風デザインが、かすかに垣間かいま見える……。主人公・光源氏の絶頂期に開かれた演奏会・女楽おんながくのシーンで、彼女たちが身にまとった美しい装束に思いをはせて生まれた、彩り華やかなきんちゃくポーチをご紹介します。

みなさま、こんにちは! 歴史と読書が好きな、フェリシモ「ミュージアム部」プランナーのささのはです。

みなさまに質問です! 平安時代における超有名な文学作品と言われたら、何を思い浮かべますか?

おそらく、清少納言の『枕草子まくらのそうし』と並び、紫式部の『源氏物語げんじものがたりを挙げる方も多いのではないでしょうか?

紫式部 著、世尊寺伊房せそんじこれふさ 詞書[他]『源氏物語絵巻』1巻(1911)
国会図書館ウェブサイトより

『源氏物語』とは平安時代中期に成立した、世紀のプレイボーイ・光源氏を主人公に据えた長編小説です。彼と様々な女性たちとの間に生まれた恋心、そして政界でも活躍するなど大成功を収めた光源氏の華々しい姿に、当時『源氏物語』を手に取ることができた上流階級の人々は、老若男女問わず熱中しました。

魅力的な場面が数多くある名作の中でも『源氏物語 第三十五じょう若菜わかな』には、彼の栄光の絶頂期に開かれた華やかな演奏会・女楽おんながくの様子えがかれていまして……。

~源氏物語『若菜下』・女楽のあらすじ~

冷泉帝れいぜいていの譲位をきっかけに新しい天皇が即位し、彼に嫁いだ光る源氏の娘・明石の女御が第一皇子を出産した後のお話。
光源氏の正妻・女三宮の父である朱雀院すざくいん(光源氏の異母兄でもある)の「五十賀(50歳のお祝い)」に向けて演奏会を開くことを決めた光源氏は、リハーサルを兼ね、六条院(源氏が作り上げたハーレム)に住まう女性たちが楽器を奏でる身内だけの宴「女楽おんながく」を開催することとなった。
梅の花も盛りに近づく頃に開かれた女楽は、女三宮、紫の上、明石の上、明石の女御らの素晴らしい演奏により無事成功を収める。

どんなに美しい光景だったでしょう……

咲き誇る梅の花に、春も近づく頃。色鮮やかな装束を身にまとった女君たちが奏でる美しい調べに、誇らしげに彼女たちをたたえる光源氏。

光源氏と彼を軸に集まった女性たちが築き上げた、華やかな女楽の光景を、何か形にできたら……。

そんな想いから生まれたのが、女楽にて女君たちが身にまとったうつくしい装束に思いをはせて生まれた、彩り華やかなきんちゃくポーチです。
それぞれの女君たちのエピソードから作り上げた、オリジナルの有職文様風デザインが、彼女たちが秘めた思いのごとく、シースルー生地からかすかに垣間見えるのをお楽しみください。

有職文様とは:平安時代以降、公家くげ階級の装束や身の回り品、建築物などに使われた文様のこと

ミュージアム部
『源氏物語』の女楽の光景に思いをはせて
女君たちの装束イメージきんちゃくポーチの会

月1個 ¥2,100(+10% ¥2,310)
※1個だけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。

早速ですが、きんちゃくのデザインを詳しくご紹介します。


女三宮おんなさんのみや

女楽ではきんことを奏でた、光源氏の正妻(死別した葵の上に次ぐふたり目)・女三宮。彼女の装束をイメージしたきんちゃくポーチは、『若菜下』にある「桜の細長ほそなが御髪おぐしは左右よりこぼれかかりて、柳の糸のさましたり」とあるように、白に赤色がにじんだ桜の花をイメージした色合いで全体をまとめました。

きんちゃくポーチを結ぶリボンの色は、源氏によって女君たちが花にたとえるシーンより着想し選びました!
女三宮は「二月の中の十日ばかりの青柳あおやなぎの、わづかにしたりはじめたらむここちして」とのことなので、柳の葉を彷彿ほうふつとさせるような、やわらかい薄緑色のリボンに。

有職文様風デザイン
宝相華ほうそうげに猫~

きんちゃくの袋部分は、当時の装束に使われた非常に薄い絹に着想を得て、シースルー生地を重ねてみました。
生地の下に垣間見える有職文様風デザインは、女三宮に一方的な思いを寄せる柏木かしわぎと出会うきっかけにもなってしまった、女三宮が飼っていた「猫」と、柏木や源氏との関係、そして柏木との間に生まれた子供に対する源氏の振る舞いに思い悩み、最後は出家したことから、仏教にゆかり深い唐草からくさ文様「宝相華ほうそうげに仕上げています。
まだ若く可愛らしい女三宮の出家を残念に感じる光源氏と、尼となった彼女が交わした歌、

源氏:
はちす葉を おなじ台と契りおきて 露のわかるる けふぞ悲しき

超意訳:「一蓮托生いちれんたくしょう」の言葉通り、来世では同じ蓮の花に住もうと約束したけれど、現世では蓮の葉にこぼれた露のように別れ、交わらないのが悲しい。

女三宮:
隔てなく はちすの宿を契りても 君が心や すまじとすらむ

超意訳:「同じ蓮の宿に一緒に住もう」と約束しても、あなたは本心では、私と一緒に住みたいなんて思ってもいないでしょう?

から着想を得て、ふたりのまじわらない来世を思い、蓮の花を思わせる宝相華の花びらを散らせるデザインにまとめています。


〈紫の上〉

女楽では和琴わごんを奏でた、光源氏の最愛の女性・紫の上。彼女の装束をイメージしたきんちゃくポーチは、作中につづられた葡萄えび染にやあらむ、色濃き小袿こうちきうす蘇芳すおう細長ほそながに、」から着想を得て、紫の上にぴったりの濃く贅沢ぜいたくな紫色をメインにした色味にまとめました。

紫の上のきんちゃくを結ぶリボンは、桜色。「花といはば桜にたとへても、なほものよりすぐれたるけはひことにものしたまふ」と、光源氏は彼女を、桜に勝るほど美しい姿であると称えました。

有職文様風デザイン
七宝しっぽう樺桜かばざくらと露~

出家を望んでいたことから仏教にゆかり深い「七宝」文様をベースに、作中で紫の上を例える表現として使われた「樺桜の花」を組み合わせました。
また、最期の時を悟った紫の上と、そんな彼女と光源氏が交わした

紫の上:
おくと見る ほどぞはかなき ともすれば 風にみだるる 萩のうわ露

超意訳:あなたは私が起きているのを見て喜んでいるけれど、少しの風に乱され消えてしまう萩の上の露のように、はかない命なのです。

光源氏:
ややもせば 消えをあらそう 露の世に おくれ先立つ ほど経ずもがな

超意訳:まるで消えることを争う露のようなこの世で、先立ったり後に残されることなく、一緒に消えてしまいたい。

の歌から着想を得た「露」イメージのデザインも取り入れています。


〈明石の上〉

女楽では琵琶びわを奏でた、光源氏が流れ着いた土地で恋をした女性・明石の上(作中では明石の御方おんかた)。
彼女の装束をイメージしたきんちゃくポーチは、作中の「柳の織物の細長ほそなが萌黄もえぎにやあらむ、小袿着て、うすもののはかなげなる引きかけて」より着想を得て、風にそよぐ涼やかな柳の葉の色のような色合いにまとめました。

彼女は「五月待つ花橘、花も実も具しておし折れるかをりおぼゆ」とあるように、花と実を一緒に摘んだ香り高い花橘はなたちばなに見立てられました。今回は、橘の真っ白な花をイメージしたリボンに。

有職文様風デザイン
青海波せいがいはに松~

実の娘・明石の女御の幸せを願う母親としての姿から、未来永劫えいごう続く幸せと平和な暮らしへの願いが込められた吉祥きっしょう文様「青海波」をベースに。そして教養はあったものの、身分があまり高くない出自であることを常に意識していた彼女の姿から、出身地である明石の浜辺にあったと伝わる「松」を組み合わせたデザインにしました。
その他にも明石の上は、明石の女御との別れの際に、彼女を「松」にたとえた

末遠き 二葉の松に 引き分かれ いつか木高こだかき かげを見るべき

超意訳:まるで松の二葉のように小さな娘と別れて、いつか、背の高い松のように立派に成長したこの子の姿を見ることができるのでしょうか?

の歌も詠んでおり、明石の上にとって松は、何かと縁がある植物であります。


〈明石の女御〉

女楽ではそうの琴を奏でた明石の女御。
彼女の装束をイメージしたきんちゃくポーチは、作中に紅梅こうばい御衣ぎょいに、御髪おぐしのかかりはらはらときよらにて、火影ほかげ御姿おすがた、世になくうつくしげなるに、」とあるように、赤い梅の花をイメージした色合いで全体をまとめました。

「よく咲きこぼれたる藤の花の、夏にかかりて、かたはらに並ぶ花なき朝ぼらけ」とあるように、源氏は自らの娘である明石の女御を、初夏の夜明けに咲く藤の花のようだと例えました。明け方の柔らかい光を受ける藤の花を想像し、柔らかい藤色のリボンを採用しています。

有職文様風デザイン
波立涌なみたてわくに樺桜~

天皇の妻である中宮となり次期天皇を生んだ背景から、特に高貴な文様である「立涌たてわく」をベースに、生みの親・明石の上のデザインから「波模様」を、育ての親・紫の上のデザインからは「樺桜の花」をそれぞれ組み合わせました。

生みの親である明石の上のことはもちろんですが、明石の女御は育ての親である紫の上を本当に大事に思っていました。
第四十帖・御法みのりでは、早く帰ってくるよううなが御所ごしょからの催促さいそくを振り切って二条院に滞在し、病床の紫の上を見舞って手を握り、そのまま彼女を看取りました。


きんちゃくの絞り口は、それぞれが着用していた装束をイメージした4色を配しました。まるで女君たちが身にまとう装束の袖口のように雅です。

底には約7cmのまちがついているので、物を入れたら自立!見た目も麗しく、使い勝手も抜群です。

しぼり口が大きく開くので、物の出し入れがしやすいです◎

コスメの持ち運びなどにぴったりの収納力で、雅に日々をサポートします!

これくらい入ります

大成功を収めた女楽。
しかし、実はその晩、源氏最愛の女性・紫の上が病に倒れてしまうのです。
病身の紫の上が二条院に移されて楽器もしまい込まれた六条院は、あの宴が嘘だったかのように、まるで火が消えたようになってしまい、彼の光につつまれた人生もが、少しずつ陰りを帯び始めます。
沙羅双樹さらそうじゅの花の色、盛者必衰じょうしゃひっすいことわりをあらわす」というように、永遠の幸せというものは物語の上にもないのかもしれません……。

かつて栄華をきわめた貴公子と、彼を取りまく女性たちに思いをはせつつ、物語の片鱗へんりんを日常生活でお楽しみいただけたら幸いです。

ミュージアム部
『源氏物語』の女楽の光景に思いをはせて
女君たちの装束イメージきんちゃくポーチの会

月1個 ¥2,100(+10% ¥2,310)
※1個だけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。


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