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文豪が綴る心震わす言葉を飲みほして。日本近現代文学作品イメージティー

ひとりの本好きが「すきとおったほんとうのたべもの」の具体化に挑戦してみました。

作家が紡いだ言葉が、まさしく食べ物がごとく体を構築する感覚を、もっとダイレクトに感じることが出来るイメージティー。

みなさま、こんにちは!
歴史と読書が好きなミュージアム部プランナー・ささのはです。
突然ですが、みなさまは以下の文を読んだことはありますでしょうか?

 これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、にじや月あかりからもらってきたのです。
 ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、わたくしはそのとおり書いたまでです。

これは『銀河鉄道の夜』などで知られる宮沢賢治によって、『注文の多い料理店』の序文として書かれた文章の一部です。
賢治は自分が見たものを「きれいなたべもの」「きれいなやきもの」とも称し、自分が書く話はすべてそういった「うつくしいもの」から生まれたのだと言います。そしてこの文は、最後、このように締めくくられます。

けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりのいくきれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。

物語が食べ物になる。
作家が書いた物語が、読んだ人を構築する一部になる……。

本と言えば読んだ人に大きな影響を与えることができる、いわゆる「人生を変えるアイテム」の筆頭。
かくいう私も様々な作家による言葉をまるで食べ物のように摂取し、影響を受けて育ちました。面白い物語を読み終えてパタンと本を閉じるとき、自然とため息が出、満腹感にも似たものを感じることすらあります。

自分がやっていることに悩んだ時は、夏目漱石の『私の個人主義』を読み返します

とはいえ、これは目に見えない大変感覚的なもの。
作家が紡いだ言葉が、まさしく食べ物が如く体を構築する感覚を、もっとダイレクトに感じることが出来たらいいのに……。
何より私がそれぞれの物語から感じ取った、宮沢賢治がいうところの「すきとおったほんとうのたべもの」を具体化してみたい!

そんなことを考えたプランナーが日本の近現代文学を4作品選出し、各作品に登場する印象的なモチーフや、それぞれを象徴する色から連想したイメージティーを作ってみました。

パッケージデザイン・文字はすべて、色とりどりの万年筆インクで描かれています!

YOU+MORE!×ミュージアム部
日本近現代文学の世界に浸る 文学作品イメージティーの会

月1セット ¥1,800(+10% ¥1,980)
※note内の写真はすべて調理例です。
※1セットだけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。

早速ですが、イメージティー及び作品のラインナップと、着想元になったモチーフたちの紹介をさせていただきます!


〈中島敦著『山月記さんげつき』× 虎にかえるように色が変化するお茶〉

人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情せいじょうだという。己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形がいけいをかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。

「山月記」より
『山月記』のあらすじ:中国・唐の時代が舞台のお話。李徴りちょうは若くして役人を辞めて詩家を志すが、現実は厳しく再び地方の官吏として働くことになる。そのことに耐えきれず、行方をくらませた李徴はやがて一匹の虎に変化する。そして虎となった李徴の前にかつての友人・袁傪えんさんが通りかかり、李徴は自らの人生を振り返る。

中島敦著『山月記』に描かれた、「虎に姿を変える李徴と、別れの夜明け」をモチーフにしたジャスミン香る青いブレンドティー。レモンを入れると、お茶の水色すいしょくが青色から赤紫色に変化します。

表紙側には満ちていく月に向かって咆哮ほうこうする虎の「李徴」を描いています。
中国が舞台のお話なので、中国の切り絵・剪紙せんしテイストを感じられるデザインに。

裏表紙側は、李徴が立ち去った後の風景。
白く光を失った残月がただ、静かに空に浮かびます。

ようやく四辺の暗さが薄らいで来た。木の間を伝って、何処からか、暁角ぎょうかくかなしげに響き始めた。
最早、別れを告げねばならぬ。酔わねばならぬ時が、(虎に還らねばならぬ時が)近づいたから、と、李徴りちょうの声が言った。

「山月記」より

《物語をもっと楽しむために…》
蜂蜜を入れたカップに、ジャスミンが香る青いお茶を注いで。ストローなどで吸ったレモン果汁をそっと蜂蜜部分に注ぎ入れれば、人間が虎に変身するがごとく、ふわりと夜明けの空の色に変化します。カップのふちには、残月のような輪切りレモンを添えても素敵です。


〈高村光太郎こうたろう著『智恵子ちえこしょう』× 天のものなるレモンの紅茶〉

私はあなたの愛に値しないと思ふけれど
あなたの愛は一切を無視して私をつつむ

「智恵子抄」より
『智恵子抄』について:題名にもある智恵子とは、高村光太郎の妻・高村智恵子のこと。光太郎は彼女と出会った時からその死後に至るまで、30年間に渡って智恵子への想いを詩や散文として記録した。『智恵子抄』はそれらをまとめた詩集。

高村光太郎著の詩集『智恵子抄』につづられた一編・レモン哀歌よりイメージした、「わたしの手からとったひとつのレモン」をモチーフにした紅茶です

表紙側には高村光太郎の妻・智恵子が恋焦がれた、彼女の故郷にある「阿多多羅あたたら山」と、その上に広がる「ほんとの空」を。
また、トパアズの香りを漂わせるレモンをデザインに取り入れ、思わずはっと目が覚めるような爽やかな色合いにまとめました。

裏表紙側は病床の智恵子が作った「切り絵」をテーマに、二人の出会いを象徴する花・グロキシニヤで飾りました。光太郎のアトリエを訪ねる際に、智恵子がグロキシニヤの大鉢を持ってきたと光太郎は書き残しています。

トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ

「智恵子抄」より

《作品をもっと楽しむために…》
香りがはじけるように立ち上る、新鮮なレモンをトッピングして。まるで自身の半身のようにも思える大事な人と、一緒の時間を過ごしたい。そんな時におすすめなアレンジです。


室生むろお犀星さいせい著『みつのあわれ』× 燃えている金魚のように赤いお茶〉

「あたい、何時死んだって構わないけど、あたいが死んだら、おじさまは別の美しい金魚をまたお買いになります? とうから気になっていて、それをお聞きしようと思っていたんだけれど。」
「もう飼わないね、金魚は一生、君だけにして置こう。」
「嬉しい、それ聞いてたすかった、あたい、それではればれして来たわ。何処にも、あたいのような良い金魚はいないわよ、お判りになる、おじさま。」

「蜜のあわれ」より
『蜜のあわれ』のあらすじ:老作家が小説の力で人間に化けさせている、金魚の赤子あかこが主人公。赤子はまるで本物の人間のように歯医者に行き、おしゃれを楽しみ、お出かけをする。そして老作家の講演会で、彼を想って現世を漂う幽霊の女性と出会い……。

室生犀星著『蜜のあわれ』に描かれた、「誰より大胆で無邪気な金魚の女の子」をモチーフにしたフルーツハーブティー。金魚のように赤い水色すいしょくが目を惹きます。

表紙側には金魚の赤子が夢見る「たくさんの金魚のお友達との暮らし(そしてメダカ!)」と、飼い主である小説家のおじさまのお遣いで買おうとした「赤いのや青いのがまざっている鬼みたいに大粒の金平糖」をデザイン。
作中で「大胆で無邪気」と称された金魚の少女をイメージした、明るくポップな色合いでまとめました。

裏表紙側には、赤子と幽霊の女性の邂逅かいこうにまつわるモチーフを。
赤子が腰かけていた石の塀に、厳しい冬の訪れを告げる白椿。
そして幽霊の女性がかつて持っていた壊れた時計は、二人が出会う「ふたすじの道」がある時刻・5時を指します。

「金魚はおさかなの中でも、何時も燃えているようなおさかななのよ、からだの中まで真紅なのよ。」
「何故そんなにさかなのくせに、燃えなければならないんだ。」
「燃えているから、おじさまに好かれているんじゃないの。」

「蜜のあわれ」より

《物語をもっと楽しむために…》
よく冷やした赤いお茶に、著者・室生犀星といえばの果物・あんずや、林檎やベリーを加え、フルーツティーにするのもおすすめです。色とりどりな果物と一緒に、真っ赤な金魚・赤子のはじけるような魅力をお楽しみください。


〈江戸川乱歩らんぽ著『孤島ことうの鬼』× 宝石より魅力みりょく的なチョコレートの紅茶〉

「道雄は最後の息を引取る間際まぎわまで、父の名も母の名も呼ばず、ただあなた様の御手紙おてがみを抱きしめ、あなた様のお名前のみ呼び続け申候もうしそうろう

「孤島の鬼」より
『孤島の鬼』のあらすじ:主人公の箕浦みのうらは、同僚の木崎初代と恋に落ちる。指輪を贈った箕浦へのお返しに悩んだ初代は、手提げに入れて肌身離さず持ち歩いている「命の次に大事な系譜図」を彼に渡した。しばらくして初代は事件にまきこまれて命を落とし、その現場からはいつも持ち歩いていた手提げと、何故かチョコレートの缶が消えていた。復讐を誓う箕浦は友人の力を借りて犯人探しに奔走ほんそうするが、しかしこれは壮大な事件の一部分に過ぎなかった。

江戸川乱歩著『孤島の鬼』で描かれた、「最初の事件解決のかぎを握ったチョコレート」をモチーフにした紅茶です。

表紙側には、事件の犯人を探し求めてたどり着いた島にある古井戸と、そこから入ることが出来る暗い横穴が。
主人公たちの道しるべにもなる太い麻縄は、無情にも誰かの手によってすぱっと切られています。

裏表紙側には、主人公と初代の恋の様子を描いています。
箕浦が「初代の指に映画のような手つきではめてあげた、電気石がはまった指輪」、二人が交わした「手紙」、初代が語る記憶の中の「彼女の故郷を描き出したホテルの用箋」、そして初代が箕浦に婚約の証として預けた「古めかしい織物の表紙がついた薄い系譜図」……。
二人の親密さを象徴するものたちが、不穏な雰囲気を漂わせる「七宝の花瓶」へ向けて落下していきます。

おいしいかい。君はいい子だね。だが、そのチョコレートはそんなに上等のではないのだよ。この金色のかんに入った奴は、それの十倍も美しくって、おいしいのだよ。ホラこの罐の綺麗なことを御覧。まるでお陽様みたいに、キラキラ輝いているじゃないか。

「孤島の鬼」より

《物語をもっと楽しむために…》
甘い香りが立ち上るチョコレート風味の紅茶に、ミルクとお砂糖を加えて糖分摂取。主人公たちと一緒に、怪事件の犯人を推理してみてはいかが?
きっと犯人は、綺麗きれいなものと甘いものに目がない人物でしょう。
ちなみに著者の江戸川乱歩も甘いものが好きだったのだとか!


イメージティーを納めた本型パッケージは文庫本と同じサイズで、本好きのこころをくすぐります。

※出版社により文庫本のサイズは若干異なります

1箱に17個、ティーバッグが入っています。

お茶を飲みきったら、パッケージに小物を収納して楽しめます。

※直接食品を入れるのはおやめください

商品に同封されている情報カードの一部にパッケージデザインの一部をプリントしており、切り取ることでしおりとしてお使いいただけます。

ぜひ読書のお供にお使いください◎

ゆったりと読書を楽しむ、癒しのひととき。
作家が描いた作品世界の味や香りや色を現実世界に再現した「イメージティー」を飲みながら本を読んだら、「物語が食べ物のように自分を構成する一部に変わる感覚」が感じとれるかもしれません。

YOU+MORE!×ミュージアム部
日本近現代文学の世界に浸る 文学作品イメージティーの会

月1セット ¥1,800(+10% ¥1,980)
※note内の写真はすべて調理例です。
※1セットだけ(1ヵ月だけ)の購入も可能です。
※詳しくは「初めての方へ・お買い物ガイド」をご確認ください。


~もっと作家・作品に触れたい方へおすすめ~

実際にプランナーが訪れた、
作家ゆかりのミュージアムその他の紹介コーナー

【高村光太郎関係】

・高村光太郎記念館(岩手・花巻)
作家としてだけではなく彫刻家・装丁家としても活躍した、オールマイティーな高村光太郎の魅力をたっぷり知ることが出来ます。町中心部からは離れているのですが、ぜひ一度足を運んでみてください!

高村光太郎記念館
〒025-0037 岩手県花巻市太田3-85-1
開館 午前8時30分 閉館 午後4時30分(秋季以降は午後4時まで)
休館日 12月28日~1月3日
※冬期悪天候の場合は臨時で休止する場合があります。
※ミュージアムの展示内容は訪問期間によって異なる可能性があります。
※最新の情報は公式HPでご確認ください。

・高村山荘(岩手・花巻)
記念館の横にある、高村光太郎がかつて住んでいた山荘。
貴重な建物を守るため、山荘を覆うように保護用の套屋うわやが二重に建てられています。

・「雨ニモマケズ」 詩碑(岩手・花巻)
宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の詩碑で、碑の文字は高村光太郎によるものです。詩人・草野心平の紹介で賢治の『春と修羅しゅら』を読んだ光太郎は、賢治が紡ぐ詩的世界を称賛し、彼の死後は『宮澤賢治全集』発刊のために奔走しました。

【室生犀星関係】

・室生犀星記念館(石川・金沢)
犀星の生家跡に建つ記念館。犀星の作品や直筆の原稿、遺品などさまざまなものが展示されています。
さすが、自身の著作の装丁にこだわっていた犀星。装丁デザインを落とし込んだミュージアムグッズがとても素敵でした。

室生犀星記念館にて、詩集『青き魚を釣る人』の装丁などからデザインされたブックカバー&栞を購入しました!手すき和紙で出来ていて、しっとりとした感触が気持ちいい一品◎

室生犀星記念館
〒921-8023 石川県金沢市千日町3-22
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
※休館日 火曜日(祝日の場合は翌平日)
 2月8日、15日、22日 3月1日、(展示替7~11日)、15日、22日、29日
※ミュージアムの展示内容は訪問期間によって異なる可能性があります。
※最新の情報は公式HPでご確認ください。

・雨宝院(石川・金沢)
幼少の犀星を養子として引き取ったお寺で、記念館から歩いてすぐ。著作『幼年時代』ではその頃の思い出が自伝的小説として書かれています。

・犀川(石川・金沢)
犀川のほとりにある雨宝院で育った犀星。犀川の西(せい)に生まれ育ったことをペンネームの由来とするほど、犀川がある風景を愛していました。

・海月寺(石川・金沢)
河北潟かほくがた投毒疑獄事件」にて罪を被せられた加賀藩豪商・銭屋五兵衛を弔うために建立されたお寺。海月寺の2階には、犀星がかつて下宿していたお部屋があります。また、境内には犀星が詠んだ句碑があるのでお見逃しなく。

・金沢城公園 三文豪の石像(石川・金沢)
金沢三文豪と呼ばれる、泉鏡花きょうか・室生犀星・徳田秋声しゅうせいの像。
お散歩がてら文豪たちに会いにいってみては?

左から犀星、泉鏡花、徳田秋声

【江戸川乱歩関係】

・江戸川乱歩像(三重・名張)
乱歩の生家がある名張へ。駅を降りてすぐ、立派な像が迎えてくれます。

・江戸川乱歩生家跡(三重・名張)
乱歩の生家跡は今は広場に。記念の石碑が建っていました。

・天麩羅はちまき(東京・神保町)
昭和期、乱歩や作家クラブの面々が、毎月27日にこの天ぷら屋さんの2階に集まって「二七にしち会」を開催していたのだそう。絶品の天丼をいただきました!!


記事内の作中文章引用元:
①中島敦(1942)「山月記」青空文庫より 
②高村光太郎(1956)「智恵子抄」青空文庫より
③室生犀星(1959)「蜜のあわれ」青空文庫より
④江戸川乱歩(1929)「孤島の鬼」青空文庫より
⑤宮沢賢治(1924)「注文の多い料理店 序」青空文庫より

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