時計のクオリティーを支える、牛島さんの美学

こんにちは、日本職人プロジェクトのリーダー山猫です。

誰かの物語(story)をカタチにした、どこにもないプロダクトを生み出す日本職人プロジェクト。たった1人の「好き」「欲しい」に寄り添う物づくりを続けています。

今回ピックアップするのは、琥珀色の腕時計。金沢にある時計工房のアートディレクターであり、日本画家でもある牛島孝さんと一緒に作っている大人気シリーズの最新作です。

牛島さんの知識や技術、センス、何より美学によって支えられているこのシリーズ。いつも多くは語らない牛島さんですが、その妥協ないこだわりについてご紹介します。

その文字盤は、驚くほどの美しさでした

牛島さんと最初に作ったのは、2020年夏にデビューした「藍月に見惚れる腕時計」。青い月をイメージしたこの時計は予想をはるかに超えて大ヒット、あっという間に売り切れてしまい、再販のリクエストをたくさんいただきました。

第一作目は、青い月(ブルームーン)をイメージした文字盤が特徴。

牛島さんとの出会いはその1年ほど前にさかのぼります。国内で時計を作れる工房を探していて、プロジェクトメンバーのNISHIYANが見つけてくれたのが、石川県金沢市にある手作り時計専門工房でした。

すぐにNISHIYANとふたりで金沢まで足を運び、制作を依頼。そのときに、アートディレクションを担当する牛島さんと打ち合わせをし、日本職人プロジェクトのための特別モデルを組んでいただくことになりました。

金沢の工房で打ち合わせ。こちらのリクエストを静かに聞いてくれる牛島さん。

しばらくして送られてきたのは、青いグラデーションが見事な文字盤のサンプル。同封されていた手紙には、「絵の具の溜まり具合により、一点一点表情が異なります」と書かれていました。

絵の具の溜まり方の違いで、表情いろいろ。それぞれに味わいと魅力があります。

なぜ、一点ずつ表情が異なるのか。その答えは、「溜塗(ためぬり)」という技法にあります。この文字盤は、平筆に透明感のある絵の具を含ませてひと塗りし、自然なグラデーションを表現しています。

文字盤ひとつひとつに、筆で絵の具をのせていきます。

さっと一筆で仕上げるため、やりなおしのきかない作業。絵の具の溜まり具合で生まれるグラデーションが何よりの魅力です。筆にふくませる水の量や、乾くときの温度・湿度などで濃淡の出方が変わるため、まったく同じものはふたつとありません。

この技法を取り入れているのは、日本画家としての顔も持つ牛島さんならでは。絵の具の自然な濃淡で表現された青色は、本当に見惚れるほどの美しさでした。しかも、文字盤そのものにも工夫がされていて、なんと純銀メッキ加工が施されているんです。

「純銀メッキの上に透明感のある絵の具を重ねることで、下地の銀がほのかに透けて、光が当たるとキラリと輝くんです」と牛島さん。(実はこの話、ずいぶん後から知りました。)こちらがお伝えしたイメージを的確にとらえ、さらに想像以上の工夫とアイデアでクオリティーを高めてくださったことに驚きました。

その後も、桜の花びらが手首に舞い降りたような「櫻に見惚れる時計」、まぶしい初夏の緑を思わせる「新緑に見惚れる時計」など、いくつもの名品が誕生。今では、ストーリーズの中でも屈指の人気アイテムになっています。

時間の流れを美しく表現する、琥珀色の輝き

そしてこのたび完成した最新作は、悠久の時の流れを感じさせる「琥珀色」の文字盤。土の中でゆっくりと化石化する琥珀のイメージが、溜塗で美しく表現されています。

純銀メッキを施した文字盤に絵の具をのせることで、琥珀の透明感も演出。

溜塗は、絵の具が乾くまで約2週間。手作業で着色し、乾くのを待ち、また手作業で文字を刻んで……と、まさにアナログな工程を経て完成します。時間と手間をかけてカタチにしていくこの作業は、琥珀ができる過程にもどこかつながるように感じました。

数字を刻むのも、針を取り付けるのも、すべて手作業。

この琥珀色の文字盤に合わせて、牛島さんがコーディネイトしたのは金色のフレーム。深みのある琥珀色との相性は抜群です。ちなみにこのフレームは、ステンレス鋼にイオンプレーティングという特殊なメッキを施したもの。1950年代にアメリカのNASAで開発されたメッキ方法で、皮膜の耐久性がとても高く、メッキの剥がれなどがほぼないそうです。金色のチタンをコーディングしている状態なので、金属アレルギーも起きにくいとのこと。

フレームの色だけでなく、材質にまでこだわるところがさすが。

レザーベルトは、オリーブ色とベージュ色の2色。どちらも肌なじみが良い、上品なカラーです。こちらも日本プロジェクトのメンバーと牛島さんとで、話し合って決めました。

やわらかい色味のベージュ。どんな色の装いにも似合う、万能カラーです。
くすみ感のあるオリーブ色は、おしゃれな印象。さりげない存在感が光ります。

このベルトも、実はこちらの工房で作られたもの。手首に直接ふれる革の裏面は、化学物質を使っていないフルベジタブルタンニングレザー(植物性タンニン鞣しのヌメ革)が使われていて、肌へのやさしさと耐久性を兼ねたベルトになっています。ベルトの金具も金属アレルギーへの配慮から、アルミ製のものが使用されています。

工房にある材料や機材をすべて把握する牛島さんが、トータルにコーディネイト。

見た目の美しさはもちろん、着け心地や肌へのやさしさまで配慮する、そのこだわりに脱帽です。牛島さんのディレクションには、「長く、安心して使っていただきたいから」という想いが、細やかな工夫として表れています。

ずっと一緒の時計だから、急がず、慌てず

いつもこちらのリクエスト(無理難題??笑)に、楽しみながら応じてくださる牛島さん。本当に多くは語らない方なので、私たちも後から聞いて、「そんな工夫が……」と驚くことがたくさんあります。

この小さくてシンプルな時計に、語りつくせないほどの工夫が凝らされているのがすごいところ。着けたときの美しさは本当に素晴らしくて、時間ではなく、時計をじーっと見つめてしまうほど。手もとを華奢(きゃしゃ)に、ほっそり見せてくれます。

しかも、一般的なレディース腕時計は50~80gですが、こちらの時計はわずか11g(※サンプルを計測した重量)。とても軽くてストレスのない着け心地なので、時計が苦手な方、ふだん時計をしない方にもおすすめです。

一点ずつ手作業で仕上げるため、すぐ、たくさんは作れない時計ですが、むしろそこが魅力。手間暇かけて大切に作られた時計と一緒に、これからの時間を楽しんでください。

次回は、人気プランナーMOEの「私が欲しい」シリーズをご紹介。「それ私も欲しかった!」と思わず言ってしまうアイテムが登場します。お楽しみに!

金沢の時計職人が手掛けた 琥珀色の腕時計〈サンドベージュ〉

¥20,900(税込み)

金沢の時計職人が手掛けた 琥珀色の腕時計〈オリーブ〉

¥20,900(税込み)

※日本職人プロジェクト「Stories〈ストーリーズ〉」の商品は、ご注文いただいてからひとつずつ仕立ててお届けします。
※インターネットでのお申し込み締め切り:2021年9月15日(水)23:59まで
※商品お届け時期:2021年8月下旬~9月下旬までに随時

日本のモノづくりを通してたくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。2004年のスタート以来、様々な魅力的な方の想いと共に「物」語るアイテムを誕生させてきました。

プロジェクトリーダー 山猫

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